3/6 太陽光パネルリサイクル工場見学会@近畿電電輸送株式会社
3月6日(水)に近畿電電輸送株式会社さんのソーラーパネル・リサイクル工場の見学に行ってきました。見学会の参加者は20名ほどで、リサイクルへの関心の高さがうかがわれますね。
京阪石清水八幡宮駅からバスで20分ほど南下した工業地域にリサイクル工場はありました。もともとは電柱のリサイクルを手掛けられていたということで、敷地内には沢山の電柱も集められています。ただ、近年は電柱自体が減っていることもあり、ソーラーパネルのリユースやリサイクルも始められているということでした。
同じ敷地内にリユース工程とリサイクル工程があるので、二班に分かれてそれぞれを見学します。ちなみに「リユース」はソーラーパネルをソーラーパネルとして再利用することで、「リサイクル」はソーラーパネルをソーラーパネル以外の製品に生まれ変わらせて再生利用することを意味します。例えば風水害や雪害を受けたソーラーパネルのうち、まだ使えそうなパネルがリユースに、使うのが難しそうなパネルがリサイクルに回されてくるようです。
リユースの工程はパネルがちゃんと使えるかどうかを確認する検品が中心になります。最初は漏電検査です。ソーラーパネルを水につけた状態で1000Vの電圧をかけ、漏電しないか検査するそうです。なかなか怖いですね。高圧のため必ずゴム手袋を着用するよう、張り紙がされていました。この検査で漏電が見つかったパネルは使えないのでリサイクル工程に回されます。
漏電検査が終わると、綺麗に洗浄して乾燥されたあと、発電検査になります。実際に光を当ててどの程度発電する能力が残っているかを検査します。さらに、レントゲンのような装置で透視検査。パネル内部の配線がどの程度正常かが検査されます。見本の写真にはほぼ綺麗なパネルや、セル(内部回路)が破損しているパネルが示されていました。下の写真では2割ほどのセルが破損していますね。
これらの情報はリユース品の販売会社に伝えられて、どの程度の値段で再販売するかを決めるのに使われます。破損部分が多くて使えないパネルはリサイクル工程に回されることになります。歩留まりはケースバイケースだそうですが、敷地内には再利用されるソーラーパネルが数千枚山積みされていました。少なからぬソーラーパネルが再び文字通り日の目を見ることができるのは嬉しいですね。
見学後半はリサイクル工程です。こちらはソーラーパネルとして再利用するのが難しいパネルが、第二の人生に向けて歩み始める工程になります。
写真の「ReSola」という機械がリサイクルのためにソーラーパネルを分解する装置です。パネルの裏側にある配線ボックスを手動で取り外したあと、パネルの外側のアルミ枠をこの機械で取り外します。ローラーでパネルが運び込まれると自動でアルミ枠の部分を検出して、ハンガーのように見える大きな爪でバリバリと引きはがすのだそうです。取り外されたアルミ枠は有価物として引き取られて再生利用されることになります。
次の写真が、アルミ枠が取り外されたパネルの表面の保護ガラスをはぎ取る装置です。ローラーを使ってガリガリはがしていきます。
動いているところが見られるとよかったのですが、この日は残念ながら調子が悪くてお休み中ということでした。ローラーの間を2往復半する間に90%のガラスがはぎ取られるそうです。それ以上はぎ取ろうとするとガラスに不純物が混じるので、これぐらいでやめているということでした。はぎ取られたガラスは発泡ガラスなどに加工されて土壌改良剤や脱臭剤として使われるそうです。下の写真が発泡ガラスですが、中に空気を含んでいて持ってみるとびっくりするほど軽かったです。発泡スチロールみたいな軽さでした。これを土に混ぜると保水作用があり、根の伸びるスペースも確保されて土壌を改良する効果は大きそうです。長い年月のうちに発泡ガラスは土に戻るので、その点も安心です。ただ、現状では高価(1㎥あたり数万円!)なので土壌改良剤として販売するのは難しく、多くは飲食店の汚水の脱臭剤として使われているということでした。このあたりの使い道が課題ですね。
アルミ枠と保護ガラスをはがされた残りがバックシートと呼ばれる部分になります。これがソーラーパネルだったときに発電を行う心臓部分なのですが、実物は写真のようにペラペラのシートでちょっと意外でした。
この状態では内部の配線は壊れているので光が当たっても発電することはできません。ただし、2010年頃までに作られたソーラーパネルでは、バックシート内に銀が使われているので、精錬所で溶かして分離すると銀のインゴッドが作れるのだそうです。あと内部の配線に銅も使われているので、こちらも再生利用が可能です。というわけで、このバックシートはある程度の量が集まると精錬所に引き取られていくのでした。
このように、ソーラーパネルとして再利用が難しいパネルはアルミやガラスや銀や銅の原料として新しい人生を歩んでいくことになります。これらは有価物として、それぞれの素材を扱う企業に引き取られるのですが、その対価はそれほど大きなものではないようです。そこで、近畿電電輸送株式会社さんではソーラーパネル1枚あたり3000円の手数料を頂いて、リサイクル作業を引き受けているということでした。「大きくても小さくても1枚3000円!」という分かりやすい価格設定にしているそうです。確かにそれだと覚えやすいですね。この手数料は主に人件費とReSolaの運転費および減価償却に充てられます。
使えなくなったソーラーパネルを1枚3000円の手数料でリサイクルに委託する事業者がどの程度あるのか気になるところですが、廃パネルをリサイクルに出さない場合は産業廃棄物として埋め立て処分することになります。この場合、有害物質を出さないように管理する管理型処分場に埋め立てる必要があるので、処分の費用は1枚3000円を超えることが多いということでした。そういう事情だと1枚3000円の手数料でも需要がありそうです。
せっかくのソーラーパネルを埋めてしまうのはもったいないですし、産廃の処分場不足にも拍車をかけてしまいますので、リサイクルして再生利用できるのはとても有意義ですね。2022年の日本の太陽光発電の発電能力は78800メガワットで世界3位となっています(EI統計)。1メガワットは100Wパネル1万枚に当たりますので、ざっくり8億枚ほどのソーラーパネルが日本に設置されている計算になります。寿命が数十年としても、やがては年に1千万枚以上のパネルが廃棄されるようになることでしょう。現在、近畿電電輸送株式会社さんをはじめ2社が関西で、6社が関東でソーラーパネルのリサイクルを始めているそうですが、大量廃棄の時代に備えてリサイクル技術の開発やリサイクル品の販路の開拓が大事になってきそうです。
今回は先駆的な試みを始められている企業のお話を伺えて大変興味深かったです。近畿電電輸送株式会社の社員さんには大変分かりやすく説明をしていただきありがとうございました。今後のご発展をお祈りしています!
きょうとグリーンファンド会員 大浦
京阪石清水八幡宮駅からバスで20分ほど南下した工業地域にリサイクル工場はありました。もともとは電柱のリサイクルを手掛けられていたということで、敷地内には沢山の電柱も集められています。ただ、近年は電柱自体が減っていることもあり、ソーラーパネルのリユースやリサイクルも始められているということでした。
同じ敷地内にリユース工程とリサイクル工程があるので、二班に分かれてそれぞれを見学します。ちなみに「リユース」はソーラーパネルをソーラーパネルとして再利用することで、「リサイクル」はソーラーパネルをソーラーパネル以外の製品に生まれ変わらせて再生利用することを意味します。例えば風水害や雪害を受けたソーラーパネルのうち、まだ使えそうなパネルがリユースに、使うのが難しそうなパネルがリサイクルに回されてくるようです。
リユースの工程はパネルがちゃんと使えるかどうかを確認する検品が中心になります。最初は漏電検査です。ソーラーパネルを水につけた状態で1000Vの電圧をかけ、漏電しないか検査するそうです。なかなか怖いですね。高圧のため必ずゴム手袋を着用するよう、張り紙がされていました。この検査で漏電が見つかったパネルは使えないのでリサイクル工程に回されます。
漏電検査が終わると、綺麗に洗浄して乾燥されたあと、発電検査になります。実際に光を当ててどの程度発電する能力が残っているかを検査します。さらに、レントゲンのような装置で透視検査。パネル内部の配線がどの程度正常かが検査されます。見本の写真にはほぼ綺麗なパネルや、セル(内部回路)が破損しているパネルが示されていました。下の写真では2割ほどのセルが破損していますね。
これらの情報はリユース品の販売会社に伝えられて、どの程度の値段で再販売するかを決めるのに使われます。破損部分が多くて使えないパネルはリサイクル工程に回されることになります。歩留まりはケースバイケースだそうですが、敷地内には再利用されるソーラーパネルが数千枚山積みされていました。少なからぬソーラーパネルが再び文字通り日の目を見ることができるのは嬉しいですね。
見学後半はリサイクル工程です。こちらはソーラーパネルとして再利用するのが難しいパネルが、第二の人生に向けて歩み始める工程になります。
写真の「ReSola」という機械がリサイクルのためにソーラーパネルを分解する装置です。パネルの裏側にある配線ボックスを手動で取り外したあと、パネルの外側のアルミ枠をこの機械で取り外します。ローラーでパネルが運び込まれると自動でアルミ枠の部分を検出して、ハンガーのように見える大きな爪でバリバリと引きはがすのだそうです。取り外されたアルミ枠は有価物として引き取られて再生利用されることになります。
次の写真が、アルミ枠が取り外されたパネルの表面の保護ガラスをはぎ取る装置です。ローラーを使ってガリガリはがしていきます。
動いているところが見られるとよかったのですが、この日は残念ながら調子が悪くてお休み中ということでした。ローラーの間を2往復半する間に90%のガラスがはぎ取られるそうです。それ以上はぎ取ろうとするとガラスに不純物が混じるので、これぐらいでやめているということでした。はぎ取られたガラスは発泡ガラスなどに加工されて土壌改良剤や脱臭剤として使われるそうです。下の写真が発泡ガラスですが、中に空気を含んでいて持ってみるとびっくりするほど軽かったです。発泡スチロールみたいな軽さでした。これを土に混ぜると保水作用があり、根の伸びるスペースも確保されて土壌を改良する効果は大きそうです。長い年月のうちに発泡ガラスは土に戻るので、その点も安心です。ただ、現状では高価(1㎥あたり数万円!)なので土壌改良剤として販売するのは難しく、多くは飲食店の汚水の脱臭剤として使われているということでした。このあたりの使い道が課題ですね。
アルミ枠と保護ガラスをはがされた残りがバックシートと呼ばれる部分になります。これがソーラーパネルだったときに発電を行う心臓部分なのですが、実物は写真のようにペラペラのシートでちょっと意外でした。
この状態では内部の配線は壊れているので光が当たっても発電することはできません。ただし、2010年頃までに作られたソーラーパネルでは、バックシート内に銀が使われているので、精錬所で溶かして分離すると銀のインゴッドが作れるのだそうです。あと内部の配線に銅も使われているので、こちらも再生利用が可能です。というわけで、このバックシートはある程度の量が集まると精錬所に引き取られていくのでした。
このように、ソーラーパネルとして再利用が難しいパネルはアルミやガラスや銀や銅の原料として新しい人生を歩んでいくことになります。これらは有価物として、それぞれの素材を扱う企業に引き取られるのですが、その対価はそれほど大きなものではないようです。そこで、近畿電電輸送株式会社さんではソーラーパネル1枚あたり3000円の手数料を頂いて、リサイクル作業を引き受けているということでした。「大きくても小さくても1枚3000円!」という分かりやすい価格設定にしているそうです。確かにそれだと覚えやすいですね。この手数料は主に人件費とReSolaの運転費および減価償却に充てられます。
使えなくなったソーラーパネルを1枚3000円の手数料でリサイクルに委託する事業者がどの程度あるのか気になるところですが、廃パネルをリサイクルに出さない場合は産業廃棄物として埋め立て処分することになります。この場合、有害物質を出さないように管理する管理型処分場に埋め立てる必要があるので、処分の費用は1枚3000円を超えることが多いということでした。そういう事情だと1枚3000円の手数料でも需要がありそうです。
せっかくのソーラーパネルを埋めてしまうのはもったいないですし、産廃の処分場不足にも拍車をかけてしまいますので、リサイクルして再生利用できるのはとても有意義ですね。2022年の日本の太陽光発電の発電能力は78800メガワットで世界3位となっています(EI統計)。1メガワットは100Wパネル1万枚に当たりますので、ざっくり8億枚ほどのソーラーパネルが日本に設置されている計算になります。寿命が数十年としても、やがては年に1千万枚以上のパネルが廃棄されるようになることでしょう。現在、近畿電電輸送株式会社さんをはじめ2社が関西で、6社が関東でソーラーパネルのリサイクルを始めているそうですが、大量廃棄の時代に備えてリサイクル技術の開発やリサイクル品の販路の開拓が大事になってきそうです。
今回は先駆的な試みを始められている企業のお話を伺えて大変興味深かったです。近畿電電輸送株式会社の社員さんには大変分かりやすく説明をしていただきありがとうございました。今後のご発展をお祈りしています!
きょうとグリーンファンド会員 大浦
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